【医師監修】赤ちゃんがなりやすい胃腸風邪とは?熱・嘔吐などの症状と対処法・予防法

嘔吐や下痢、発熱などの症状が出る胃腸風邪は赤ちゃんに多く見られる病気です。特に赤ちゃんの場合は脱水症状を引き起こすこともあり、適切な対処が必要です。ここでは、赤ちゃんや子供の胃腸風邪の症状に対する対処法、胃腸風邪にかからないための予防法をまとめて解説しています。

胃腸風邪とは

冬に流行する胃腸風邪。胃腸風邪とはどのような病気なのでしょうか。

胃腸風邪は「感染性胃腸炎」の通称

胃腸風邪は、正式には「感染性胃腸炎」と言います。細菌やウイルスに感染することで発症し、発熱や下痢、嘔吐などの症状が出ます。原因となる細菌やウイルスは数多くあり、症状や流行時期も一定ではありません。ただ、過去のデータから見ると冬の初め頃から流行りだすことが多く、「胃腸風邪」は主に冬に流行する「ウイルス性の感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)」を指していることが多いです。

胃腸風邪の原因と感染経路

感染性胃腸炎を引き起こす細菌・ウイルスはさまざま。その中でも「胃腸風邪」の原因としてよく知られるウイルスを紹介します。

ノロウイルス

感染性胃腸炎の原因として特に有名なのがノロウイルス。多くの場合、口からウイルスが入ることで感染します。ノロウイルス感染者の便や嘔吐物に触れた手からの二次感染や、汚染された食物(カキなどの二枚貝)を十分加熱しないで食べることによる感染もあります。

ロタウイルス

赤ちゃんや小さな子供が感染しやすく、世界では年間50万人以上の5歳未満の子供がロタウイルス感染症で死亡しているとされています。子供のときに感染すると免疫がつき、その後感染する可能性は少なくなります。感染力が非常に強く、ノロウイルスと同じく口からの感染がほとんどです。

アデノウイルス

3歳以下の小さな子供に感染が多いウイルスです。保育園などで流行しやすい「プール熱」の原因ウイルスでもあります。感染経路の多くは「糞口感染」で、便の中に出たウイルスに触れた手から口に入り感染します。このほか、咳やくしゃみからの飛沫感染もあります。

熱・嘔吐ほか胃腸風邪の症状

胃腸風邪にかかるとどのような症状が現れるのでしょうか。主症状と、原因別の症状の特徴を紹介します。

胃腸風邪の主な症状

嘔吐、下痢、吐き気、腹痛などが主症状となります。症状は原因となるウイルスによっても異なり、また、個人差も大きいです。人により、全身のだるさや発熱といった症状が見られることもあります。
胃腸風邪の症状で注意したいのが脱水症状。下痢や嘔吐で多くの水分が体外に出てしまううえ、飲食も通常のようにできないので、脱水症状が起こりやすくなります。特に小さな子供は自覚しにくいので、周りの大人が注意して様子を見る必要があります。尿量が減る、涙があまりでない、だるそうにぐったりしているときは脱水症状の可能性があるので早めに小児科を受診しましょう。

原因ウイルス別の症状の特徴・潜伏期間

胃腸風邪の主な症状は上で紹介しましたが、原因となるウイルスによって症状の現れ方に特徴があります。

ノロウイルスが原因の胃腸風邪の症状

ノロウイルスは、感染後1日~2日で症状が現れます。嘔吐や下痢などの主症状のほかに37度~38度の熱が出ることもあり、その後は2日~3日で症状が治まります。感染しても症状が出なかったり、出たとしても軽い風邪症状で終わったりといったことも。ただし、小さな子供や免疫力の弱い高齢者などは症状が強く現れやすく、脱水症状に注意が必要です。

ロタウイルスが原因の胃腸風邪の症状

感染後2~4日後に突然症状が出始めます。症状は発熱と嘔吐から始まり、白色の便が出る下痢を起こすこともあります。症状は1週間~2週間で治まってきますが、下痢がひどいケースでは脱水になることも。また合併症として、けいれんや脳炎、脳症が引き起こされることもあります。

アデノウイルスが原因の胃腸風邪の症状

感染から1週間程度で症状が現れます。嘔吐は50%程度、発熱は30%程度の頻度です。下痢はほとんどの場合に見られ、白色やクリーム色の便になることもあります。下痢の症状自体は激しくはありませんが、長引きやすく、1週間以上続くこともあります。

薬で治る?胃腸風邪の病院での治療

下痢や嘔吐の症状が現れる胃腸風邪。脱水症状の危険があるため、早めに受診し適切な治療を受けることをおすすめします。

胃腸風邪の主な治療は対症療法

ウイルスが原因の胃腸風邪は、インフルエンザなどと違い効果的な抗ウイルス薬がありません。そのため、病院での治療は主に症状を和らげるための対症療法となります。現れている症状別に適した対症療法が施されます。

嘔吐がある場合

嘔吐が激しい場合には吐き気止めが処方されることがあります。また、体内の水分や電解質が失われやすいため、糖分や塩分を含んだ水分をとらせますが、水分がとれない場合は点滴をして脱水症状を改善します。

下痢がある場合

下痢の場合、便を出すことで病原体を体内から排出できる、下痢止めを使用すると病原体を腸管内に停留させることにもなるなどの理由から、強い下痢止めを使用するのはよくないと言われています。小児科により異なりますが、下痢止めでなく整腸剤を処方されることが多いです。嘔吐の場合と同じく、水分摂取や点滴も対症療法として行われることがあります。

熱がある場合

発熱があるときは、解熱剤を投与することもあります。発熱と嘔吐がある場合は座薬の解熱剤を使用し、下痢があるときは内服薬で処方されます。

細菌性の胃腸風邪では抗生物質が処方されることも

胃腸炎の原因がウイルスではなく、サルモネラやカンピロバクターなどの細菌であった場合は、抗生物質が処方されることがあります。

胃腸風邪のときの食事

胃腸風邪の症状がひどいときは、普段通りの食事をとれないことも多くあります。食事内容を工夫して、無理なく少しずつとらせるようにしましょう。

食べ物は無理に食べない

嘔吐や下痢があるときは、無理に食事を食べさせる必要はありません。無理に食べさせると、かえって消化不良で症状を悪化させてしまうこともあります。食事はいったん止めて、ゆっくりお腹を休ませてあげることも大切です。

症状が落ち着いてきたら、まずは水を一口から始めます。その後、水の量を徐々に増やし吐かないことを確認してから食べ物を始めましょう。温かいスープやすりおろしたりんごなどからお腹を慣れさせ、しばらくはおかゆやうどんなど消化によいものをあげるようにしましょう。脂肪分の多い食事や、食物繊維の多い野菜やきのこ類などは下痢症状を悪化させやすいので避けてください。

飲み物はこまめにとる

脱水症状を予防するためにも、飲み物は少量ずつこまめにとらせるのが理想です。急にたくさん飲ませるのはNG。かえって吐き気がひどくなったり、お腹が刺激されて下痢しやすくなったりします。

飲ませる飲み物は常温の水やスポーツドリンクなどにして、甘みの強い消化の悪いジュースや炭酸飲料、乳製品は避けましょう。少量の水分でも何回も吐いてしまうときは、点滴での治療が必要になることもあります。

胃腸風邪はうつる!感染を予防するには

胃腸風邪の原因は、ノロウイルスやロタウイルスなどの感染です。流行時期は特に感染しやすいため徹底して予防しましょう。

手洗い・うがい

誰でもすぐに始められる予防法が手洗い・うがい。胃腸風邪の多くは口からウイルスが入ることでの経口感染で発症します。ドアノブや手すりなどはウイルスが付着していることも多く、毎日触る場所でもあるため気づかないうちに感染してしまいます。外出から帰った直後や食事前は手洗いうがいを徹底しましょう。

消毒

ドアノブ、手すり、電気のスイッチボタン、窓の取手など多くの人が触れる場所はこまめに消毒するようにしましょう。消毒には、塩素系漂白剤を使用します。原因となるウイルスは感染者の便に含まれていることが多いため、特にトイレ周りは念入りに消毒しましょう。

調理時の十分な加熱

ウイルスが付着している可能性がある食品は、食品の中心部の温度85℃~90℃で、90秒以上加熱する必要があります。また、調理に使用した包丁やまな板なども消毒しておくとよいでしょう。

予防接種

赤ちゃんが感染しやすいロタウイルスは、予防接種を受けることで重症化を防げる可能性があります。予防接種を受けると赤ちゃんのお腹でロタウイルスに対する抗体ができ、ロタウイルスに感染しても症状を抑えられることが研究でわかっています。

ロタウイルスの予防接種は、生後6~24週の間に2回接種するものと生後6~32週の間に3回接種するものがあります。

胃腸風邪は脱水と周囲の感染に注意

ウイルスに感染することで発症する胃腸風邪。症状には個人差がありますが、嘔吐や下痢がひどいときは脱水症状に注意しましょう。特に赤ちゃんは、自分で水分をとることができません。大人がしっかりと様子を観察し、ぐったりした様子があれば早めに受診しましょう。また、ウイルスによっては周りへの感染力が強いものもあるため、家庭内感染には徹底対策を。赤ちゃんや子供が嘔吐や下痢をしたときの処理は使い捨てのマスクやビニール手袋を使用して下さい。汚れた洋服やタオルは下洗いをした後、熱湯消毒か塩素系漂白剤で消毒をしてから、他のものとは別にして洗濯をし、天日干しして下さい。

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